2014年03月22日

桜色ではない「桜」の色とは



 今年の冬はとりわけ厳しく例年にない大雪に見舞われたこともあり、少しずつ近づく春を焦がれ待つ思いも、いつも以上のような気がします。雪深い滋賀湖北で育った筆者は、春が近づくと田んぼの土手にオオイヌノフグリ(この名前なんとかならないでしょうか)が青く小さい花をびっしりと咲かせる様子を見るのが好きでした。やがてむせかえるような菜の花の香り、肥の匂い、ひばりの声などが次々と「春だよー」と声を挙げていくのです。

 そして真打登場という形で咲き誇るのが桜。これほどまでに毎年多くの日本人をやきもきさせたり、心を躍らせたりする花はそうはないですよね。何度見てもうっとりとしみじみと日本の春は素晴らしいなぁという思いにさせてくれる花です。

 その思いは王朝時代の貴族たちも同じ。宴会をして歌を詠み、散らなければよいのにと嘆きます。そして季節を生活に取り入れることに巧みであった彼らは、桜を身にまとったのです。
 とはいっても桜模様の着物を着るのではありません。古典の教科書の挿絵でおなじみの、着物を何枚も重ねた「十二単衣」の色の重なりで桜を表現していました。その表現方法は実に巧み。「桜のほんのりと淡い紅色をあらわすには、紅花で染めるのがふさわしい。しかしあえて紅花を濃く、あるいは蘇芳で本来の桜色よりかなり濃く染める。そしてその表には蚕が糸を吐いたままの透明でシャリ感のある生絹を重ねる。すると、光が透過して下の濃い赤色はフィルターをかけたように淡い桜色にみえたのである。」(『王朝のかさね色辞典』より)とひとひねりが効いているのです。他にも山の緑や桜の葉を連想させる緑とのかさね、ヤマザクラの葉の紫がかった色を写し取った紫とのかさね、白桜を表現した白×白のかさねなど、実にさまざまな色の重なりで桜を表現していました。王朝人の桜表現の斬新さは、今では何を表しているのか不明な黄や青も使われているほどです。

 この桜のかさねは『王朝のかさね色辞典』でご覧いただけます。色見本はすべて植物染料で和紙を染めて作成しており、桜のかさねだけでも何と25種類!その他のかさねも花や季節を繊細に大胆に表現していて、王朝人の色表現の多彩さに圧倒されます。現代の洋服に取り入れると「えっ、赤のシャツにピンクのジャケットですか…」と周りの方に怖がられそうなので、封筒と便箋の組み合わせや、プレゼントの包装などに応用してみると、季節ごとに楽しみが広がりそうですね。(刈安)



 
紫紅社オンラインショップ『王朝のかさね色辞典』
posted by 茜色 at 15:07| 京都 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 刈安 ブログ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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